ある日、森の中

思ったこと、考えたこと、調べたこと、経験したこと

悲しみが歯を通じて体の痛みにつながっていることを実感した

肩も首も肩甲骨も痛すぎて鍼灸院に行き始めた。

もともと、肩凝りはあれど自覚することができず、美容院でマッサージしてもらうたびに「頭も肩も凝ってますね」と指摘されて、「はぁそうですか」と言うばかりで十数年過ごしてきたけれど、この2ヶ月くらい、凝りを通り越して激烈に痛い。寝起きに肩が上がらない。ぴりぴり、ズキズキする痛み。原因と思われるパソコン作業は働き出して以降、妊娠前・中ともずっと多い方で、復職後は寧ろ減っているのに何故?!と思いつつ、7,8年前に寝違えた時に鍼をしてもらったら一晩で治ったことを思い出して、近所の鍼灸院を探して予約した。

きれいで、鍼灸師さんが何人かいて元気のある鍼灸院。

問診票に痛みの部位や時期など記入。欄外に、「最初はお話を伺います。一見、痛みと関係のない質問と思われることもあるかもしれませんが、原因を探るためにお聞きすることがあります」というようなことが書いてあった。実際に、若くて優しそうな担当のお兄さんが40分もかけて話を聞いてくれた。痛みの場所、程度、時期などを聞かれ、時期的には完全に死産+産休の後だよなと思いつつ、言おうかどうしようか迷いつつ、最近の出来事として簡単に話をした。お兄さんは「それは大変でしたね。その時は悲しいこともたくさん感じられたでしょう」と言い、ストレスが原因となる痛みの話をしてくれた。私は肩凝りがスタートだと思っていたけれど、ストレスが原因の場合、上下の歯を噛み締めていることで、首、肩に余計な力が加わって痛くなることがあるという。「歯を噛み締めるなんて大袈裟な」と疑問を呈したら、上の歯と下の歯が触れ合っていること自体が力が入っているのだと教えてくれた。通常、歯は離れているものらしい。

ということで、鍼のスタートは顎の両側(耳の下あたり)と“全身の気の流れを良くする”という手のツボからだった。私の主訴は首肩および肩甲骨だったので意外。見立てはストレスによる歯の噛み締め、ということ。

後頭部と首にもしてもらい、初回終了。

上下の歯を噛み合わせないように気をつけることとストレッチが宿題となった。

 

気をつけて生活してみると、たしかに私の歯はふれあっているのが常のようで、離すよう意識すると違和感があった。夫は普段、歯は離れているというので、やはり力が入っているのかもしれない。

 

そんな気づきを伝えつつ、2回目も顎と手と首、肩に鍼を刺された。

朝起きて肩がつらいのはだいぶ良くなった。

ただ、上の歯と下の歯が触れ合っているのは、どうやら長年の習慣っぽいので、なんで今、こんなに痛くなっちまったのか…加齢かよ…と思っていた次の日。

 

復職してからも、たまに、仕事帰り等に突然泣ける日がある。特に普段のルーティンとは違う仕事があった時が多いけれど、そうでなくても急に泣けたりする。生理周期と関係するような気もするし、しない気もする。だいたい帰り道で、その日も運転中だったのでいかんと思って、ぐっとこらえた。

そこでハッと気づいた。

 

ぐっとこらえてる時に、めっちゃ歯ァ食いしばってる!!

 

ずっと家にこもっていた産休期間はこらえる必要がなく、好きなだけ泣いていたけれど、仕事が始まってからはそうもいかない場面も増えた。人と関わる時は笑顔も作るし、「調子はどう?」と聞かれればとりあえず「ぼちぼち大丈夫です」と答える。幸いなことに私の周りには「自分のペースでいいよ」と言ってくれる人が多く、仕事自体、まだ自分でペース配分できる時期なのでそこまで無理はしていないはず。それでも急にわーっと泣けたり、何もしたくなくなったり、落ち込んだりしている。

そんな時に、私は知らないうちに歯を食いしばっていた。

ああ、体に痛みが出るほどまだ悲しいのだな、と気づかされた。

心と体はつながっているとはいうけれど、こんなつながり方を実感するとは思わなかった。つらさに耐えることの比喩で「歯を食いしばる」という表現があるけれど、これはそのまま体の表現でもある。「飲み込めない(理解できない)」「腑に落ちる(納得する)」といった心身両義的な言葉を使って体と心を理解しようとした『心の消化と排出』(北山修)が思い出された。

 

もし、流産死産を経験した人で(そうじゃなくても大きな悲しみを経験した人で)、体の痛みが現れた、強まった、という人は、放置せず、鍼でもマッサージでもとにかく休憩でもいいから、体のメンテナンスをしてほしい。泣ける時間を作ってほしい。

体をいたわることは心を癒すことにつながっていく。