ある日、森の中

思ったこと、考えたこと、調べたこと、経験したこと

死産のこと 1:亡くなっているとわかった日

夏の終わりの死産という経験について書いてみる。

 

1日目。

もうあと2日で産休に入るという日。

最後の出張に出て帰ってきて、なんだか胎動が弱いな…というか、ないな…と思い、時間を意識してみたけどやっぱり1時間の中で1回も動かない。 

通っている産婦人科に電話してみたら、機械をあててみたら赤ちゃんの元気さはわかるということだったので、時間外に受診することにした。移動の間も全然動かない。そういえば出張中もどうだったかな…と思ったけど、はっきりと思い出せず。

 

産婦人科で夜勤の看護師さんが機械をあててくれたけれど、素人の私が聞いても反応がないのがわかった。加えて、看護師さんの表情。機械をあてるほど、眉間に皺が寄っていく。

「先生に診てもらいましょう」

とのことで、エコーの機械のある外来へ移動。夜の外来は静か。以前に一度、お腹の張りで診てもらったときと、今回はなんか違うな…となんとなく思っていた気がするのは、後知恵バイアスかもしれないけれど。

 

院長がエコーをあててくれた。

先週の健診では、というか、それまでの健診では毎回、元気ですねーと一瞬で終わってしまうので何しに行ってんのかなぁとさえ思っていたエコーだったのに、このとき院長が言ったのは、

 

「これ…心拍、止まっちゃってるね」

 

どれだけあてても、先週までに何度も見たようには動いていない、静かな画面だった。

「死んじゃったってことですか?」

とか聞いたと思う。最後に胎動を感じたのはいつか聞かれたけれど、胎動があまりにも日常的になっていたのと、混乱でうろ覚え。前日夜は動いていたと思うけれど、出張で朝早く出た今朝のことは覚えてない。仕事をしているとあまり意識していなかったのもあった。でも昼に少し動いたような気はする。でもわからない。

その日は出張で新幹線で1時間くらいのところに行っていた、と言うと、院長が驚いたような表情をしたように見えた。

悪いことをしたのだろうか。

無理をしたから赤ちゃんの心臓は止まってしまったのだろうか。

院長からは、500〜1000人に1人くらいこういうケースがある、交通事故に遭ったと思うしかない…と言われた。原因はわからないことが多い、と看護師さんも。意味がわからなかったけれど、頷くしかなかった。

 

そのまま私は入院となり、病室に案内されながら涙が出始め、夫が着替えなど取りに帰ったときには自分でも驚くくらいぼろぼろ泣いた。ぼろぼろ泣きながら母に電話した。母も気が動転したのか、「今から行こうか」と言ってくれたけど、その時点で21時前だったので、隣県から来られるはずもないので、「明日でいい」とぼろぼろ泣きながら返した。

この日は看護師さんが夫も泊まれるように手配してくれた。夫は一度家に帰った時に、何も寝具がないと言われても泊まれるようにと寝袋とヨガマットを持参していた。この夜を夫と一緒に過ごすことができたのは本当に有難かった。

感染を防ぐための漢方を夜の21時半と0時半に服用。お腹の中に亡くなった赤ちゃんがいることで、母体への感染症が懸念されるとのこと。漢方なんて即効性がなさそうだけど意味あるのかな…と妙に冷静に思ったことを覚えている。

看護師さんがこれからの流れを説明してくれて、返事はハイハイとしたものの、あんまりよくわかっていなかった。夫が荷物を取りに帰っている間、薬を持ってきた若い看護師さんが泣いている私の背中をさすり、「私も、もっと早い段階だけど同じ経験をしているから、お気持ちがわかります…」と話しかけてくれた。優しさを有り難く感じつつも、一方で、あなたにそんなに深刻になられても困ります…みたいな気持ちもあった。ぼろぼろ泣いているのは自分なのに、変な感覚。目の前で相手が涙を流している場面には仕事で何度も出会っているけれど、感情が溢れ出す人に対する対応はやっぱり難しい、と逆の立場で思った。

泣いたり、産休ってどうなるのかななどと夫と話したり、また泣いたり…して過ごした。眠ろうとすると涙が出てくるので、殆ど眠れなかった。

 

胎動がないな…と意識し始めてから、病院で診てもらって、夜になるまでのほんの4時間で、人生で一番の感情の揺れと悲しみを経験した。