ある日、森の中

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死産のこと6:入院4日目・出産日 その2

18時。

夕食が運ばれてきた。出産に向けて体勢が脚を開いた状態にさせられたので、父母妹はもとの個室に移動。夕食はできるだけ食べてねと言われたが、この体勢・状況で食えるか!ということで夫にほとんどあげた。

お腹の痛みは、無痛分娩の麻酔のおかげですごく痛くはなかったが、それでも痛みと圧迫される感じがずっと続いていて、「うんこが出そう」とずっと言っていた。今思うと、あれはたぶん看護師さんたちにも聞こえていたと思う。

院長や看護師さんが子宮口をチェックして、じゅうぶん開いているとのことだった。自然に破水するのを待つ、ということだったので、陣痛でお腹に圧力がかかっていきみたくなっても力を入れないほうがいいのかと思い、一生懸命力を入れないようにしていたが、1時間ほどして来た助産師さんが、なかなか破水しなかったためか、「力入れてみましょうか」と言いだした。力入れて良かったのかよ!と思いながら、陣痛に合わせて力を入れる。さっきまで定期的に感じていた陣痛だったのに、合わせようと思った途端にとらえにくくなる。でも力を入れて2回めか3回めには、破水した。「7時10分」と助産師さん。そのすぐ次に力を入れた瞬間、何かがもりっと股から出てきたのを感じた。助産師さんが待ち構えている。次の波で力を入れるとさっきよりも小さい何かが出てきたのを感じた。1回目が頭で、2回目が全身なんだろう、ということはわかった。「7時12分」と助産師さんが言った。何かが、全部、出た、と思った瞬間に助産師さんが手に小さな赤ちゃんを抱えていくのが見えた。心の片隅にほんの少しだけ、出てきたら動きやしないかと思うこともあったけれど、やっぱり泣いても動いてもいなかった。代わりに私と夫が泣いていた。

 

出産は、すごく痛くて、それまでの冷静な自分とは全然違う感じになって、陣痛が10分間隔からどんどん短くなって、数時間~数十時間に及んで、鼻からスイカ出すよりも痛くて、股が裂けたり切ったり縫ったりして、でも産まれた赤ちゃんのおぎゃあという泣き声を聞いたら痛いのが吹き飛んで、周りから「おめでとうございます!」「頑張ったね」とか言われて賑やかになって、やっと会えた!って嬉しい愛しい気持ちになるようなものなのだと思っていた。無痛分娩にしたので「すごく痛い」でもなかったのは予想通りだったけれど、それ以外のところは全然違うものになった。産まれてきた赤ちゃんはすごく可愛かったけど、それ以上にすごく悲しかった。LDRには、小洒落たクリニックらしく、壁に、大人(お母さん?)の指をつかむ赤ちゃんの手の写真(把握反射)が飾られていたけれど、私たちの赤ちゃんは手を握ってくれることはなかった。