ある日、森の中

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死産のこと8:退院後の生活

無事に出産していても生活はがらりと変わったと思うけれど、無事に出産できなかった私も生活は大きく変わった。今のところ、少しずつ良くなっているとは思う。死産直後からの過ごし方でよかったと思うことを書く。

 

1ヶ月目

とにかく泣いていた。泣こうと思っていないのに涙がずーっと出ていた。人間ってこんなに泣けるんだなと驚いた。亡くなっているとわかった日から連続で28日泣いていた。この「泣く」ということを思う存分できたのがよかったと思う。親から実家でしばらく過ごしたらという提案もあったけれど、同じように悲しいはずの夫を一人にしておくことはできないと思ったのと、見栄っ張りなので人がいると泣くのを多少セーブしてしまうだろうと思ったので、自宅で過ごすことにした。人に依るのだろうが、一人がよければ一人で、実家がよければ実家で過ごして、感情をたくさん出して過ごすのが良いのだろうと思う。

産後は少なくとも1ヶ月程度はホルモンバランスが崩れた状態と何かで見たので、29日目に初めて1日も泣かずに過ごした日は、ああホルモンバランスが治ったのか、ホルモンに振り回されているのか、とも思った。生理の時も思うけれど、少し悔しい(そのあとも泣くことはあったので別にホルモンだけのことではないが)。

家事はほとんど何もできなかった。夫が仕事から帰ってきてからご飯を作ってくれたり買ってきてくれたりしたのも良かった。ご飯を作るとかは脳のメモリをかなり使う作業だと思うので(何作るか計画したり必要な食材を買ってきたり)、できなかったと思う。唯一できたのは皿を洗うことで、ご飯を食べたあとに皿洗いだけはしていた。この時期に頑張らなくて良かった。

こんな日々だったけど、朝起きる、ご飯を食べる、風呂に入る、歯を磨く、夜布団に入る、といった日常生活の動作はなんとかやっていた。風呂に入るのが面倒と幾度となく思ったけど、ご飯は作らなくていいという夫が風呂には入ったほうがいいと言い、それに従っていたのは良かった。生活を崩さなくて済んだ。

 

2ヶ月目

泣くのが少し減ってきた。なんとなく「少し元気になろう」と決めて、それまで敷きっぱなしだった布団をたたんで過ごすようにした。たまにまた横になって1日過ごすこともあったが、基本的には起き上がって過ごした。家から5分くらいのコンビニや郵便局に、2,3日に1回くらい一人で外出するようにした。初めて1人で出かけた日は、コンビニに行って帰って10分くらいだったが、帰って来てからなぜか泣いた。家から外に出るとたくさんの刺激があって、エネルギーを使うことなんだな、と知った。

友達に手紙を書いたり、本を読んだり、自分の好きなことをするようになった。自分の好きなことで穏やかに時間を過ごすことは良かった。ただ、ときどき、なんでもできるような気がしてきて、明日はアレをしようかコレをしようかと話していると、夫に「急にいろいろやろうとしすぎてるんじゃない?」と言われて我にかえることがあった。1ヶ月目が抑うつ的だった分、やや躁的になっていたのかもしれない。

突然、眠れなくなることが続いた。寝つけなかったり、寝ても2,3時間で目が覚めてずっと眠れず朝になったりしていた。泣いて眠れないこともあればただ起きているだけのこともあった。眠れなくても次の日にどうせ予定はないので昼間寝ればいいやと思って過ごしていたら2週間くらいで眠れるようになった。食欲は変わらなかったし、気持ちは少しずつ回復している感じがあったので気にしなかったが、続くようなら医者に行く必要があったのだろうか。

産後休暇が終わるけれども職場に戻れるととても思えなかったので、上司と産婦人科に相談して診断書を出してもらい、あと1ヶ月休むことにした。上司や総務との連絡が疲れたが、ここをやらないといけないので気合い入れて電話などした。一応、気合いを入れることはできるようになったなと思った。

 

3ヶ月目

泣くことは少なくなった。スーパーに買い物に行ったり、夫と映画を観に行ったりして、外出が増えた。赤ちゃんが目に入らないように、見ても感情が揺さぶられないように無表情・無感覚で過ごす状態を身につけた。実家にも少し帰った。姪っ子(2歳&4歳)の世話をして子どもに慣れるようにしてみた。歩けるくらいの幼児(1歳半以降くらい)は大丈夫なことが多いけど、それ以前の乳児は見るのも結構しんどいということがわかってきた。新生児は完全に無理。

ずっと心配してくれていた友達に電話した。それまでLINEなど文章のやりとりはしていたけれど、直接話をすると泣きそうだと思って連絡できていなかった。友達が私のペースでLINEや電話に付き合ってくれて良かった。

医者を予約しようとしたとき、今日が何曜日か間違えることが続いた。そもそもそれまで何曜日か意識せずに過ごしていたから気にならなかったが、間違えるということは何曜日か気にしているということで、外に出る準備状態なんだろうかと思った。2ヶ月目は「職場復帰なんて無理ぃぃぃ」という感じだったが、3ヶ月目は「仕事行きたくねーなー」という感じだったので、まぁ戻る分には戻れるのだろうと思った。一応、確認というか練習をしようと思い、休みの日に夫にも付き合ってもらって職場まで行ってみたのは良かった。事情を知っている事務の人に偶然会えて、心の準備ができた。

 

今のところ良かったところ

周囲の人たちが、私のペースを最大限尊重してくれたことが最も良かった。もし、周りに死産をした人がいてどうすればいいだろう…と聞かれたら、私の場合は何もせず本人が動くのを待ってもらえるのが良かった、と答えると思う。早くからがんばりすぎない。ただ、家族など本人の日常生活を間近で見ることができる人から見て、食欲と睡眠がずっと少ないとか、2-3ヶ月経っても最初と変わらないペースで泣き腫らしているとか無気力のままとかだったら医療機関受診を考えるだろうけれど。

日々、赤ちゃんの写真を眺めたり声をかけたりしている穏やかな生活になるのに3ヶ月くらい。本当に落ち着くにはもっとかかりそうだ。