ある日、森の中

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「たのしい幼稚園」に見た性差と情報格差

幼稚園に通う姪と仲良くなりたいばかりにプリキュアを毎週見ている。そして中学生女子と宇宙人達の葛藤と友情に涙して疲れてんのかな私…と思ったりもする。

そんな中、コンビニでプリキュアが表紙になっている「たのしい幼稚園」11月号を見つけて、つい買ってしまった。

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プリキュアやリカちゃんをホログラムできらきらに! 「きらきらホログラムぬりえあそびセット」が付録の『たのしい幼稚園11月号』は9月30日発売!|株式会社講談社のプレスリリース

 

(よく見たら発売日前)

 

人生初の「たのしい幼稚園」。

私は保育園に通っていたので、現役幼児の時にもきっと買わなかったのではないかと思う。読んでみて、性差と情報格差があるんだなぁ…と気づいたことを書く。

 

性差

雑誌タイトルが「たのしい幼稚園」なので、園児が好きなキャラクターがいっぱい載っているのかなと思って見てみたが、予想に反して、女児をターゲットにしたであろうページでいっぱいだった。プリキュアマイメロ、リカちゃん、シルバニア男児向けが想定されるのは仮面ライダーリュウソウジャーが1ページずつのみ。ひらがなの練習やシール貼りなど、性差が関係ないページもあるものの、全体的にはこの雑誌は女児向けなんだなぁ、ということを初めて知った。表紙もプリキュアなので、そりゃそうだという感じだけど、こんなにあからさまだとは思わなかったので驚いた。

それで、男児をターゲットにした雑誌は別であるのかなと思って、講談社のページを調べてみた。

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講談社こども倶楽部

 

表紙で判断する限り、以下の感じに分類できそう。

 

【女児ターゲットと考えられるもの】

おともだち
たのしい幼稚園
おともだち♥ピンク
たの幼 ひめぐみ
Aneひめ(小1〜3年向け)

男児ターゲットと考えられるもの】

テレビマガジン

【より年少の子ども向け(性差なし)】

げんき
NHKおかあさんといっしょ
いないいないばあっ!

 

なんだ、「Aneひめ」て。AneCanか。(でもAneCan小学館

つまり、女児ターゲット5冊に対して、男児ターゲット1冊ということだ。

(もし隔月等で男児ターゲット、女児ターゲットが入れ替わっている雑誌があったとしたらこのカウントは変わるけれど、とりあえず今、表紙で判断した状況で)

 

これまでなんとなく、雑誌1冊に男児向けページと女児向けページが半々で入っているのかな、と思っていた。でも、よく考えれば、きょうだいで兄・妹、もしくは、姉・弟のペアだったとしても、この雑誌の対象年齢がかぶるのってきっと1年くらい(年長と年少とか)だろうから、いっそどちらかの性に限定して雑誌を作った方が売れやすいのかもしれない(被っている1年は半々ページで楽しめたとしても、残り2年は男児か女児のどちらかしか園児ではないので、男児ターゲットもしくは女児ターゲットのページしか見ない、のだとしたら損が大きいと考えて保護者が買わないかもしれない)。だから、まず、どの雑誌を読むか、という時点で、得られる情報が男児向けか、女児向けか、性差がかなりはっきり出るのだと思う。

まあ、内容に関する性差は、テレビ番組やCMを見ても明らかなので、いい。私が驚いたのは、女児/男児をターゲットにしている雑誌の冊数だ。

女児ターゲット雑誌5:男児ターゲット雑誌1、ということは、女児の方が選択肢が多く、「雑誌を読む」ということが男児よりもしやすいということになる。きっと、男児は女児よりも雑誌や本(絵本)を読まない、という判断があるのだろうと思うけれど、雑誌の数に差がある結果として、男児の方が雑誌を手に取る機会が減り、女児の方が増える。すると、女児はよく本や雑誌を読む一方、男児は外で遊んでいる、という差が助長されるのではないだろうか。しかも、雑誌の中には(たの幼しか見てないけど)、ひらがなの練習やシール貼りなどが含まれるので、女児はそういった細かい手作業に触れる機会も増えることになる。

また、タイトルを見ると、女児ターゲット雑誌は、幼稚園で楽しくお友達と過ごす、というメッセージが込められていて、周囲とのコミュニケーションを中心に過ごすことが幼児期から社会的に求められているのだと思った。もちろん、それがいかんということはないのだけど、男児だってお友達と楽しく過ごすし、おしゃべり苦手な女児もいる。その個人差はあるけれど、雑誌(あるいは社会)が発する性差に関するメッセージは幼児期からガンガンに始まっているのだ、ということが、ちょっと衝撃だった。

(出産祝いからして売り場はブルーとピンクの2色なので、産まれる前から性差は存在しているとも言えるけれど)

 

情報格差

雑誌の中に、プリキュアの新しいキャラクターがちょっとだけ描かれていた。プリキュアの仲間っぽい(私は毎週、結構真剣に楽しみに見ているので、先の展開を今知りたくなかったー! と軽くショックだった)。私がたまたま発売日前に手にしてしまっただけで、本来の発売日の頃にはこのキャラクターが出ているのかなとも思ったけれど、そうでもなかった(9/29のプリキュアはえれながサボテン星人を接待する回だった)。

もしこれを園児が見たら、「新しいプリキュアだ!」とわくわくするのかもしれない。そして、「新しいプリキュアが出るんだよ」と園で友達に言うかもしれない。雑誌を読んでいない園児は「どういうこと?」「教えて」と尋ねるかもしれない。

つまり、この雑誌を読んでいるかいないかで持ちうる情報量が変わるということだ。インターネット現代では、どれだけの情報量にアクセスできるか、が重要なのではないかと思う。何かを調べる時に、図書館と人伝ての情報だけが頼りだった時代と、Googleに教えてもらえる時代では、圧倒的に後者の方がわかることが多い(玉石混交ではあるけれど)。情報をいち早く手に入れる、ということだけが重要ではないにせよ、他者との間で優位に立ったり頼られたりする一因ではあると思う。

でも、もちろん、雑誌を買うにはお金が必要で、900円の雑誌を1年買ったら1万円を超す。「たのしい幼稚園」を買える家庭の子には新しい情報が手に入る。

幼児期の経済格差はモノ(雑誌、付録、オモチャetc.)を持っているか持っていないか、ということだけに響いてくるのかなと思っていたけれど、手に入る情報にまで影響を及ぼすのだな、ということを知った。

 

 

スタートゥインクルプリキュアは多様性とイマジネーションがテーマだと思うけれど、それを売り込む雑誌やオモチャは子どもを分類し、ターゲットを絞ることで商売をするから、画一的になり、差が広がり、自分と違う誰かを想像しづらくなっていく。

 

他にも、読者プレゼントが多くて、親が子どもにあげたいでも高いから当てたいと思って個人情報を送ってしまうのかなとか、英語の紹介ページのふりがながちゃんと発音を意識していてさすが英語必修化世代だなとか、気づきが多かった。いい買い物をした。

姪に見せたら喜ぶだろうけれど、これだけの影響があると思うと躊躇う。

 

ちなみに、付録の「キラキラホログラム」は楽しかった。こんな細かい作業を園児ができるのかな? と疑問に思った。私は割と器用な方だと思うけれど、ふわふわシールの台紙を剥がすときに特に細いところはときどき破れてしまった。こういう雑誌の付録が楽しめるのは、手先の器用さがある子どもなんだろうな。平面シールはやりやすかったので、ふわふわシールももっと台紙に沿って綺麗にはがせるようになることを望む。